『山下清悟演出集 SHINGO YAMASHITA COMPOSITE WORKS』の補足

山下清悟演出集(以下yama本)買いました。

https://stbreak.booth.pm/items/1495665

↑僕は通販で買ったけど、もしかしたらもう再販しないのかも、知りません。

あとがきがめちゃくちゃいいので、アニメーターの人は買いましょう。

 

Twitterを観ていると、「yama本、面白いけど撮影とか3DCGソフトのことをよく知らないので単語として何が書かれているかわからない」というようなものがちらほら見受けられました。あとなんでか本の中に僕が出てきていたので、「ならまぁ僕が補足説明を足しておくかいのぅ、ほっほっほ」という感じです。

 

というわけで、あくまで「撮影に詳しくない人がyama本を読みやすくなる」ための補足なので、正確な内容では記述しません。適当です。詳しく知りたくなったら各単語をググるなりしてください。

 

パーティクル(p004他)

石とか雪とか桜の花びらとか、粒として描かれるものの総称。AfterEffectsのプラグインであるTrapcode Particular(これは後述します)や各3DCGソフトウェアによって、『パーティクルを大量に生成・物理演算を用いてばら撒く』といったことが容易にできるため、手書きでは難しい大量のオブジェクトを画面に配置することができる。寂しい画面をごまかすときによく使われる手法

多分このナルトEDにおいてはサスケェが佇む雪原に降っている雪のことを指していると思われる。

 

ティール&オレンジ(p008)

一時期ハリウッド作品で大流行した色の傾向。画面内で俳優を目立たせるためには、肌の色(オレンジ)の補色(teal:青緑)を背景等に使えばいいのでは?という発想から生まれたと思われる手法である。アイアンマンとかトランスフォーマーとか見てください。

 

板ポリ・カメラマップによるオブジェクトの配置(p013)

撮影がデジタル化される前までは各素材を1コマずつ移動量を変えることで疑似的に立体感を出していたはず(片淵監督の『大砲の街』とかその極致ですね)

AftereEffectsは3D空間内に配置できるので、今までとは違う立体的なカメラワークが可能になっている。

下の雑過ぎるGIFにおいて、左がカメラマップを使用したオブジェクト、右が板ポリを使用したオブジェクトである。板ポリは3D空間にそのまま2D画像を置いただけなので、カメラアングルを変えるとペラペラでパラッパラッパーのようになっている。左はカメラマップを使用したもので、簡単にモデリングした人形に画像をテクスチャとして投影(マッピング)したものだ。3Dモデルに張り込んでいるので角度を変えたときでも立体になっている。

すべてをモデリングしてテクスチャを一枚一枚描くのに比べて、一枚絵として描いたものを3D化するので、2Dアニメのワークフローに組み込むのが容易であるという利点がある。

https://i.gyazo.com/162a7de49076d8e81bc69f353011cacb.gif

じゃあ全部カメラマップでやればいいか?というとそうでもなくて、

モデリングの手間が発生する(コストが高い)

②あくまで絵を投影しているだけなので、絵として描かれていないエリアまでカメラが回り込むと破綻してしまう(上のGIFだと真横より先には回り込めない、絵がないので)

のような弱点もあり現実的にはすべてのカットに適用できる手法ではないので、OPみたいに何度も使用されるシーケンスや、劇場大作、あるいは超スペシャルなアクションカット等で使用される傾向が強いと思う。

ただやはり画面のリッチ感への貢献度は大変高いので、今後増えることはあっても廃れない手法ではあろう。作画による流背とのハイブリッドなど、Blenderが流行っていったらもっと低コストに扱えるようになるのかもしれん、知らんけど。

 

 

Psoft(p019)

AfterEffectsのプラグインを作っている会社、またはそこが出しているプラグイン

ここでは『CelFX』を指しているのではないだろうか

https://www.psoft.co.jp/jp/product/celfx/

 アンチエイリアスのかかってない、ドットで描かれたTPデータ(ファミコンのマリオみたいなやつね)を扱うのに特化したプラグインである。

お金がないところは似たようなことのできる『F's Plugins』を使用しているような気がする。というかこっちが大半では。Bryful神。

http://bryful.yuzu.bz/ae.html

 

 

Shine(p019)

Trapcode社が出しているAfterEffects用プラグインを指していると思われる。

サンビームとか伸びた影みたいなやつを簡単に生成できる。



 

OpticalFlares(p026)

VideoCopilot社が出しているAfterEffects用プラグイン。カメラレンズに発生するゴーストやフレアを再現できるソフト。新海誠やJJエイブラムスが多用するやたら光り輝くアレ。

 

jj abrams lens flare.jpg

↑これ

 

 

Looks(p027)

Magic Bullet社が出している色調補正プラグイン。カラーグレーディングや色収差ディフュージョンといったAeで作ろうとすると手間がかかる効果をワンクリックで実現できる大変便利なプラグインである。

yamaさんに紹介したとき「何これ、覇権アニメプラグインじゃん」って言ってたのを覚えている。そんなことないです。

 

Particular(p027)

Trapcode社が出しているパーティクル生成プラグイン。パーティクル系プラグインデファクトスタンダードであり、Aeを代表するプラグインであると言っても過言ではないだろう。もし「1つしかプラグイン入れられないAeバトルロワイアルが開催された場合、僕ならこのプラグインを選びます。



Cinema4D(p026)

Maxon社が販売する3DCGソフト。略称はC4D。

AfterEffectsとの連携が簡単、操作体系も似ている、モーショングラフィックスに最適なMoGraph(まんまなネーミングやね)という機能が搭載されている等の理由により、個人映像作家が好んで使用しているソフト(のように個人的には感じる)。

プロメアとかソードアートオンラインとかで使われていたりする。

https://www.maxonjapan.jp/archives/work/promare_movie_1

https://www.maxonjapan.jp/archives/work/sword_art_online_os

 

AfterEffectsは3D空間の操作がくそやりづらいので、C4Dでレイアウトとカメラワークをつける、というのをyamaさんは好んでやってるみたいです。人それぞれですね。

機能を制限されたLite版がAfterEffectsをインストールすると勝手にインストールされます。いっそAdobeはC4D買収してくれよ…

僕も数年前に習得しようかなと思って体験版でチュートリアルをこなしていた時があったのですが(yamaさんに操作方法教えてたのはそのあたりの時期)、個人的にソフト代金をペイできるほど使わないかなぁと思ったので結局買わずじまいでした。今考えればこの当時にC4Dをマスターしていれば今とは違った人生を歩んでいたような気がする。人生にたらればはない、お金で迷ったらさっさと買いましょう。みなさんは間違った道を歩んではいけません。あ、最近Blender始めました。

 

 Lenscare、デプスマップ(p028)

https://flashbackj.com/product/lenscare-for-ae

AfterEffects用のブラー生成プラグイン。カメラレンズをシミュレートしたボケが作れる、Aeデフォルトのカメラブラーよりは軽い、等の理由により結構使われている気がする。新海誠が「ぼかすぜっ!」って言いながらBGぼかした時のプラグインも多分これだと思う。

3DCGソフト上でも当然一眼レフで撮ったようなボケは再現可能だが(というかそっちの方が精度は断然高い)、あとから微調整しようとすると再レンダリングが必要という危険性も伴うので、レンダリング時間が長くトライ&エラーが多いアニメーションにおいては、後からコンポジット時にぼかす方が都合よかったりする。

デプスマップというのは、奥行き方向の情報を白黒の画像で表現したものである。3DCGソフトでデプスマップを書き出しておいて、それとこのLenscareを組み合わせることにより、好きな場所にピントを合わせてボケをつくることができるというわけだ。

ちょっと前まではLenscare一強って感じだったけど、最近いろいろなボケ作成プラグインが出てきているのでもしかしたら情勢が変わるのかもしれない。

 

通称28000個のランタン(p031)

f:id:fukkunmania:20190815024456p:plain

Cinema4Dの機能、一つのオブジェクトを増殖させる『クローナー』という機能と、様々なパラメータをランダムにする『ランダムエフェクタ』を組み合わせることにより誕生した地獄のことである。

クローナー機能を使うとXYZ軸に沿って複製ができるのだが、yamaさんが欲張りすぎて30×30×30という指定をしたために27000個に増えた。

さらにこの当時はCinema4Dというか3DCG全般の知識がほぼなかったので、「中にろうそくの火が灯ってて、半透明の紙が透けている、そこそこポリゴン数があるランタン」を増殖してしまったので、パソコンからしてみれば「おいおいおい、死ぬわ、俺」って感じだったと思う。28000個の数もそうだけど、そもそも複製対象のランタンを適切なマテリアル設定にしておくべきだったと思う。

余談なんだけど、この時夜中唐突にSkypeがかかってきてやたらハイテンションなyamaさんとひたすらにランタンを作った記憶がある。たぶんデスマーチで脳内物質が過剰分泌していたのだろう。僕はひたすらに眠くイライラしていたので遠隔地から東京を爆破してやりたいと心底思っていたのを覚えている。

 

 

サファイア(p031)

Boris FX社製のSapphireというAeプラグインを指す。

通常のAe機能を駆使すると何手もかかる効果を一発で作ってくれる&高品質なとっても便利なエフェクト集プラグインである

https://flashbackj.com/product/sapphire

超一流映像作家はみんな持っているというもっぱらの噂である。

 

問題は価格で、おおよそ30万円はする。正直Aeとかより高い。そのため貧民にはなかなか手が届かない憧れのプラグインといってもいいだろう。

結局のところ、高品質な映像はトライ&エラーから生まれるものである。こういったプラグイン&高速なパソコンを用いてひたすらカイゼンを繰り返していくことが重要なのだ。最初の資本力が高いほどトライ&エラーの回数を増やすことができ、高品質なアウトプットが生まれ、よりお金を稼ぐことができ、より高額な機材を買うことができる…といったいい循環にのることができるわけだ。これはアニメーターが低賃金なため、その場しのぎの仕事を取り、ますますジリ貧になっていくのと対象的だと言える。

そういう意味では、よほど才能がある人間以外は、お金を最初どこに振り分けるかどうかが将来を左右する可能性は大いにある。個人的には高性能な自作PCと無料ソフトであるBlenderの組み合わせが一番個人の生存戦略には適していると思っている…が、未来は予想がつかない。みんな、なんとか生きましょう。

 

ちなみに、僕はRed GiantのUniverseというプラグインを使用しています。年間契約で解約がしやすいのと、RedGiantが個人的に好きだからです。『YU-NO』のED映像に関してはVHS風のグリッチ、RGBシフト、パズル完成時のグローなどに使いました。結構便利です。これは使い続けるかもしれない。

 

ベイク(p043)

3DCGソフト等で物理演算をすると、文字通り演算が行われます。簡単なものならいいですが、大量のパーティクルをまき散らしたりしている状態で、何度も再計算が行われると作業にならなかったりします。そのため、「よし、この動きでいこう」と決めた際に再演算を行わないように動きを「焼き固めて」しまうことがあります。これがベイクという作業です。AfterEffectsにおいても、キーフレームで作っておいた動きをベイクしてしまって、要らないフレームを間引いたりします。ただし、Aeはベイクを解除することができないのでご利用は計画的に。アコム

ロークオの輝き(p045)

web系は雑さや素人っぽい処理を「味わい」と称しそのまま通しますし、場合によっては狙って演出します。クライアントの精神が心配になります。

 

あとがき(p055)

ちゃんとやろう、確定申告。

税務署は見ている、あなたを。

 

 

 

こんなところでしょうか。また追記したり削除したりするかもしれません。

つかれたのでなんかほしいものリストからモノください。以上です。